試して理解 Linuxのしくみを読みました
有名な本を読みました。感想がてら特に面白かったいくつかのトピックについてまとめてしめます。
[試して理解]Linuxのしくみ ~実験と図解で学ぶOSとハードウェアの基礎知識
- 作者: 武内覚
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ファイルシステムの不整合について
本で出てきた例では
- ファイルシステム上ではファイルはディレクトリに紐づいていて、階層構造になっている
- そういった階層構造をmvなどで移動させる際、リンクの書き換えと元のリンクの削除の二つの操作が存在する
- その2つ以上のアトミックに行われていてほしい処理が、途中で電源が切れるなどが原因で一部行われていないがために、ディレクトリの階層構造が壊れてファイルシステムをマウントしたりできなくなる
というような状態をファイルシステム不整合、という。ファイルシステムごとの対応策のあとの最終手段として、 fsck
コマンドが存在するが、ファイルシステムの正しい状態がわからずにとりあえず整合性が取れた状態にしようとしたり、失敗に終わることが多かったりするのでファイルシステムが期待しているように利用できる状態になるというものではない。
ファイルシステムの違いとは何を指すのか、特定の目的のためのファイルシステム
ファイルシステム上のファイルやディレクトリをファイルやディレクトリとして扱うことができるのは、ファイルシステムごとに所定の方式でメタデータと本文のデータがストレージ上に配置されているため。
パーティションというのはハードディスク上で論理的に1つのデバイスのように扱える単位で*1、このパーティションという単位に対してファイルシステムを作成、マウントする*2。
ファイルシステムでは、データへのアクセス方法やファイルとして扱うデータの形式によってさまざまなファイルシステムがあり、本の中では
- ネットワークを介して繋がっているリモートホスト上のファイルヘアクエスするためのネットワークファイルシステム (
nfs
など) - カーネルの挙動をファイルへのアクセスという形式で調べるための仮想ファイルシステム (
procfs
やsysfs
,cgroupfs
など)
他が紹介されていた。
コピーオンライトのライトにどうやって気づくか
fork()
システムコールで新しいプロセスを生成する際、親プロセスのメモリを全て子プロセスにコピーするのではなく、ページテーブルだけをコピーする。
この際、親と子の両プロセスのページテーブルの各エントリに書き込み禁止フラグをつける。そうすると、書き込みが発生した時には、CPU上でページフォールトが発生するので、ページフォールトが発生したページだけ書き込み禁止を解除して子用に新しい物理メモリを割り当てるようにする。
コピーオンライトの「ライト」がなされたことを発見する方法が権限違反のエラーというのが面白かった。
HDDのアクセス特性と I/O スケジューラ、SSDの特性について
HDDは磁気ディスク(円盤)で、データ読み取りの際は
- 半径方向へはアームを機械的に動かして
- 円周方向へはディスクの回転でデータが書いてある位置へと
ディスクを動かす。そのため、HDDからデータを読み出す際は、複数のデータ読み出しがある場合は同じ半径の位置のデータはまとめて読み出すなどの工夫をすると機械的操作(時間がかかる)を減らせて高速化できる。アームの移動や回転が効率的に行えるように、複数のI/O要求の内容を並べ替えたりまとめたりするのがI/Oスケジューラ。
アームをどう動かすか、といったことはHDDによるが、HDDヘのI/O要求の内容自体はHDDごとに差はないのでデバイスドライバに実装するのではなく、ブロックデバイス層というファイルシステムやデバイスファイルより下のレイヤーにて実装されている。
HDDはシーケンシャルアクセスでは一定の値(HDDの性能限界)までは1回あたりのI/Oサイズが大きくなるほど性能が上がる。また、先読みやI/OスケジューラといったI/O支援機能によって1回あたりのI/Oサイズが小さい場合も性能を上げることができる。
一方、SSDは機械的操作がないのでランダムでもシーケンシャルアクセスでもHDDほどは性能の差がなく、I/O支援機能を利用するとI/O要求を貯める待ち時間が無視できず性能が上がらない場合も。
現場からは以上です。
*1:https://users.miraclelinux.com/technet/document/linux/training/1_3_2.html
*2:ファイルシステムの作成、あるいはフォーマットで特定のファイルシステムで扱えるようにメタデータと本文の配置方法などを設定し、マウントでアクセスできるようにする? http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1802/15/news035.html など